こんにちは、だつりょくまんです。前回は、損益通算と損失の繰越控除について、書いてきました。
今回は、所得控除について、書いていきたいと思います。一緒に勉強を頑張っていきましょう。
【所得控除の基本】
所得控除とは
所得控除とは、納税者の事情を加味して、所得金額から控除できるものをいいます。この所得控除が増えると課税所得金額が減るため、結果的に税負担が軽減されます。
収入から所得税が算出されるまでの流れ
①総収入金額ー必要経費=所得金額(課税標準)
②所得金額ー所得控除額=課税所得金額
※課税所得金額:税率が掛けられる所得のこと。税金は所得金額にかかるものではなく、所得控除を差し引いた金額(課税所得金額)に税率を掛けて算出します。
所得控除の種類
所得控除は、全15種類あります。その内容から人的控除(人に対する控除)と物的控除(支出等に対する控除)に分けられます。
所得控除の分類
・人的控除(8種類)
基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、障がい者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除
・物的控除(7種類)
社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、医療費控除、雑損控除、寄附金控除
【所得税における各所得控除のポイント】
基礎控除
基礎控除は、一定所得内であれば誰でも受けることができる控除です。合計所得控除が2,400万円を超えると段階的に減少し、2,500万円を超えると適用されません。
基礎控除の控除額
・合計所得金額 2,400万円以下
控除額:48万円
・合計所得金額 2,400万円超 2,450万円以下
控除額:32万円
・合計所得金額 2,450万円超 2,500万円以下
控除額:16万円
・合計所得金額 2,500万円超
控除額:適用なし
※2019年までの基礎控除額は、合計所得金額に関わらず、一律38万円でした。
配偶者控除
配偶者控除は、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下で、控除対象配偶者がいる場合に適用を受けることができます。控除額は、原則、最高38万円です。
控除対象配偶者とは、以下の要件を満たした配偶者のことです。なお、70歳以上(その年の12月31日時点)の控除対象配偶者を老人控除対象配偶者といい、控除額が異なります(最高48万円)
控除対象配偶者の要件
・納税者本人と生計を一にしている。ただし、内縁関係は対象外
・青色事業専従者として給与を受けていない、または事業専従者ではない
・合計所得金額が48万円以下(給与収入なら年収103万円以下)
※生計を一にするとは、日常生活の資金を共にすること。例えば、納税者本人が単身赴任等で同居していなくても、生活費を仕送りしていることなどをいいます。
※控除対象配偶者の要件として、給与収入なら年収103万円以下という表記があるのは、給与所得控除が55万円あり、103万円ー55万円=48万円(要件である合計所得金額となるためです。
配偶者控除の控除額
・納税者本人の合計所得金額:900万円以下
控除対象配偶者控除額:38万円
老人控除対象配偶者控除額:48万円
・納税者本人の合計所得金額:900万円超 950万円以下
控除対象配偶者控除額:26万円
老人控除対象配偶者控除額:32万円
・納税者本人の合計所得金額:950万超 1,000万円以下
控除対象配偶者控除額:13万円
老人控除対象配偶者控除額:16万円
※青色事業専従者:青色申告を行う者の事業に専従していて、その青色申告者と生計を一にする配偶者、およびその他の親族をいいます。
※事業専従者:白色申告(青色申告ではない申告)を行う者の事業に専従していて、その白色申告者と生計を一にする配偶者、およびその他の親族をいいます。
※親族:民法の規定で、配偶者および6親等内の血族と3親等内の姻族を親族と定めています。本人および配偶者の親、子、孫、兄弟姉妹、祖父母のほか、叔父叔母、甥姪、本人の従兄弟姉妹など、広範囲にわたります。
配偶者特別控除
配偶者特別控除は、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が48万円超~133万円以下の場合に、前述の控除対象配偶者の所得以外の要件が満たされていれば、適用を受けることができます。控除額は、納税者本人と配偶者の合計所得金額に応じて最高38万円です。
扶養控除
扶養控除は、納税者本人に控除対象扶養親族がいる場合に適用を受けることができます。また、その親族の年齢によって一般の控除対象扶養親族、特定扶養親族、老人扶養親族に区分され、控除額が異なります。
控除対象扶養親族の要件
・納税者本人と生計を一にしている16歳以上の親族
・青色事業専従者として給与を受けていない、または事業専従者ではない
・合計所得金額が48万円以下(給与収入なら年収103万円以下)
扶養親族の区分と控除額
・扶養親族の年齢:16歳未満
区分:対象外
控除額:ー
・扶養親族の年齢:16歳以上19歳未満
区分:一般の控除対象扶養親族
控除額:38万円
・扶養親族の年齢:19歳以上23歳未満
区分:特定扶養親族
控除額:63万円
・扶養親族の年齢:23歳以上70歳未満
区分:一般の控除対象扶養親族
控除額:38万円
・扶養親族の年齢:70歳以上
区分:老人扶養親族
控除額:58万円(同居老親等)、48万円(左記以外)
※同居老親等:納税者本人または配偶者どちらかと同居していて、控除対象扶養親族に該当する70歳以上の直系尊属(父母、祖父母など自分よりも上の世代)
障害者控除
障害者控除は、納税者本人や生計を一にする配偶者、16歳未満を含む扶養親族が一定の障がい者である場合に適用を受けることができます。
障害者控除の控除額
・障害者 27万円
・特別障害者 40万円
・同居特別障害者 75万円
寡婦控除
寡婦控除は、納税者本人が寡婦である場合に適用を受けることができます。その主な要件は、合計所得金額が500万円以下であり、かつ①夫と死別した後に再婚していない。もしくは②夫と離婚後に再婚しておらず、そのうえで一定の扶養親族がいる等に該当する人になります。
・寡婦控除額 27万円
ひとり親控除
ひとり親控除は、納税者本人がひとり親である場合に適用を受けることができます。その要件は、①合計所得金額が500万円以下、②現在婚姻していない、もしくは同様の事情にあると認められる人がいない、③総所得金額等が48万円以下の生計を一にする子がいる、等のすべてに該当する人になります。
・ひとり親控除額 35万円
※ひとり親控除の要件にある現在婚姻していないは、夫または妻との離婚、死別以外に未婚でも該当することを意味します。
ひとり親控除と寡婦控除
ひとり親控除は2020年分から適用されている控除です。該当する男性については、同様の控除を寡夫控除としていましたが、名称が変わり、同じ要件に該当する女性を加え、ひとり親控除となりました。
勤労学生控除
勤労学生控除は、納税者本人が勤労学生(給与等の所得がある学生)で、かつ、合計所得金額75万円以下で、勤労にもとづく所得以外の所得が10万円以下である場合に適用を受けることができます。
・勤労学生控除額 27万円
社会保険料控除
社会保険料控除は、納税者が、本人または生計を一にする配偶者、その他の親族が負担すべき社会保険料を支払った場合に適用を受けることができます。
※社会保険料:国民健康保険、健康保険、国民年金、厚生年金保険、介護保険等の保険料のほか、国民年金基金や厚生年金基金の掛金なども含まれます。
生命保険料控除
生命保険料控除は、一定の生命保険料を支払った場合に適用を受けることができます。一般生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護保険料控除に区分され、契約年の新旧の違いにより控除額が異なります。
地震保険料控除
地震保険料控除は、自宅建物や家財を保険の対象とする地震保険料を支払った場合に適用を受けることができます。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除は、納税者本人の小規模企業共済の掛金や確定拠出年金等の掛金を支払った場合に適用を受けることができます。
・小規模企業共済等掛金控除額 支払った掛金等の全額
医療費控除
医療費控除は、納税者が、本人または生計を一にする配偶者、その他の親族の医療費等を支払った場合に、一定額を超えると適用を受けることができます。ただし、支払った医療費などには控除対象にならないものもあります。
医療費控除の控除額
医療費控除額(上限200万円)=支出した医療費ー保険金などの金額ー10万円又は総所得金額等の5%のいずれか少ない金額
※医療費控除額を求める式にある10万円又は総所得金額等の5%のいずれか少ない金額は、総所得金額等が200万円以上なら10万円、200万円未満ならその5%
控除対象になる医療費とならない医療費
〇診察費、治療費など
・対象になる医療費
医師または歯科医師によるもの(出産費用を含む)、先進医療の技術料、重大な疾病が発見されて治療を行った場合の、人間ドック、健康診断の費用
・対象にならない医療費
美容整形、人間ドック、健康診断、予防接種等の費用、未払い分
〇医薬品など
・対象になる医療費
治療または療養のための薬代
・対象にならない医療費
病気予防、健康増進などのための医薬品、健康食品
〇診察費・治療費以外の費用
・対象になる医療費
入院費、病院に支払う食事代、通院のための公共交通機関の交通費
・対象にならない医療費
入院時の差額ベッド代、通院のための自家用車のガソリン代や駐車料金、タクシー代(公共交通機関で通院できる場合)
〇器具等の購入費
・対象になる医療費
診療、療養のための医療用器具
・対象にならない医療費
近視等一般のメガネ、コンタクトレンズの代金
セルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)
疾病の予防や健康の維持・増進を目的に一定の取り組み(健康診断、予防接種など)を行う居住者が、本人または生計を一にする配偶者その他の親族にかかる一定のスイッチOTC医薬品など対象となる特定の一般用医薬品等の購入費を支払った場合、その年中に支払った金額が1万2千円を超えるときは、その超えた金額の控除を受けることができます。
〇セルフメディケーション税制のポイント
・控除額(上限8万8千円)=医薬品等の購入費ー1万2千円
・医療費控除との併用はできない
・一定の取り組みは、本人が対象
※スイッチOTC医薬品:ドラッグストア、薬局で販売されている医薬品のこと。従来なら医師が処方することでしか購入できなかった医薬品(処方薬)のうち、市販薬に転用した医薬品をスイッチOTC医薬品といいます。
雑損控除
雑損控除は納税者本人もしくは一定の生計を一にする配偶者、その他の親族が保有する生活に必要な資産(住宅、家財、現金など)が、災害、盗難、横領による損失を受けた場合に適用を受けることができます。
なお、控除しきれなかった損失(雑損失)は、翌年以降、原則、3年間繰り越すことができます(雑損失の繰越控除)。
雑損控除の控除額(次のうち金額が大きい方)
①(損失金額+災害関連の支出金額ー保険金等の額)ー総所得金額等×10%
②(災害関連の支出金額ー保険金等の額)ー5万円
寄附金控除
寄附金控除は、特定寄附金(国や地方公共団体等への寄附金等)を支出した場合に適用を受けることができます。
自治体に寄附できるふるさと納税も寄附金控除の対象です。確定申告が不要な給与所得者等で、寄附先(納税先)が1年間に5自治体以内の場合には、原則、確定申告が不要で寄附金控除が受けられる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」があります。
寄附金控除の控除額(次のうちいずれか低い額ー2,000円)
①その年に支出した特定寄附金の合計額
②その年の総所得金額等の40%相当額
※給与所得者でも、医療費控除、雑損控除、寄附金控除(ふるさと納税のワンストップ特例を除く)は、確定申告をして控除を受ける必要があります。
以上が、所得控除についてでした。所得の控除は多くのパターンがあります。自分に当てはまる税額控除をしっかりと活用していきましょう。多くの方が利用できるのが、ふるさと納税。控除限度額をしっかりと調べたうえで利用することで、節税というよりも安い値段で品物がもらえるという節約にもつながります。ふるさと納税を節約として最大限活用するポイントは日用品購入です!
では、まったり~!