こんにちは、だつりょくまんです。前回は、物権変動について、書いてきました。
今回は、抵当権について、書いていきたいと思います。一緒に勉強を頑張っていきましょう。
【抵当権の基本】
抵当権とは
抵当権とは、土地や建物を債務の担保とし、債務が弁済されない場合に、その土地や建物を競売にかけ、競落代金から債権者が優先して弁済を受ける権利(担保物件)をいいます。
※抵当権は、債務者の不動産のほか、物上保証人(債務者以外の人で、担保となる不動産を提供した人)の不動産に設定することもできる。
※抵当権は、不動産のほか、地上権や永小作権にも設定することができる
※抵当権を第三者に対抗するには、登記が必要
抵当権に関する用語
お金を返してもらえる権利:被担保債権(抵当権で担保されている権利)
債権者:抵当権者(抵当権を持っている人)
債務者:抵当権設定者(自分の不動産に抵当権を設定した人)
抵当権の性質
抵当権には、付従性、随伴性、不可分性、物上代位性といった性質があります。
1、付従性
①抵当権は被担保債権が存在してはじめて成立する
②被担保債権が消滅すれば、それにしたがって抵当権も消滅
2、随伴性
抵当権は被担保債権が移転すると、それに伴って移転する。
3、不可分性
抵当権は、被担保債権の全部が消滅するまで、抵当不動産の全部について効力を及ぼす
4、物上代位性
抵当権は、抵当不動産が売却されたり、滅失等してしまった場合に、抵当不動産の所有者(抵当権設定者)が受け取るべき金銭等について行使することができる。
※抵当権者が物上代位するには、抵当権設定者がその保険金等を受領する前に差押えをしなければならない。
【抵当権の効力】
土地・建物
・土地に設定した抵当権の効力は建物には及ばない
・建物に設定した抵当権の効力は土地には及ばない
付加一体物
不動産に付加して一体となったもの(立木・雨戸・ドアなど)
(抵当権設定当時からある)従物、従たる権利
従物:主物に付属しているが独立性があり、独立して権利の対象となるもの(取り外せるもの。畳・クーラー等)
従たる権利:主物に附属した権利(借地上の建物の借地権)
・抵当権設定後の従物、従たる権利には、抵当権の効力は及ばない
抵当不動産の果実
被担保債権に不履行があった場合には、不履行後に生じた抵当不動産の果実にも抵当権の効力が及ぶ(賃料など)
【抵当権の順位】
抵当権の順位
一つの不動産に対して、複数の抵当権を設定することができます。この場合の抵当権の順位は、登記の前後によって決まります。
抵当権の順位の変更
複数の抵当権者がいる場合、各抵当権者の合意によって、抵当権の順位を変更することができます。そのさい、利害関係を有する人がいる時には、その利害関係者の承諾が必要です。
※抵当権設定者(債務者)の同意や承諾は不要です。
なお、抵当権の順位の変更は、登記をしなければ効力を生じません。
【優先弁済を受けられる額】
抵当権者は、元本のほか利息についても優先弁済を受けられます。ただし、後順位の抵当権者がいる場合には、利息については最後の2年分だけとなります。
【抵当不動産の第三者取得者がいる場合】
抵当不動産の第三取得者とは
抵当不動産の第三取得者とは、抵当権のついた不動産を取得した人のことをいいます。
第三取得者が抵当権を消滅させる方法
抵当権が実行されてしまうと、せっかく不動産を取得しても、他人(買受人)の所有物となってしまいます。これを防ぐため、第三取得者は以下の方法によって、抵当権を消滅させることができます。
1、弁済
第三取得者が、債務者の借金を全額弁済すれば、抵当権は消滅する
※債務者の意思に関係なく、第三取得者は弁済することができる
2、代価弁済
第三取得者が抵当権者の請求に応じて、抵当権者に代価を支払えば、抵当権は消滅する。
※債務者の同意・承諾は不要
3、抵当権消滅請求
第三取得者が、抵当権者に対して一定の金額を支払う代わりに抵当権の消滅を請求し、抵当権者がそれを承諾した場合は、抵当権は消滅する。
請求できる期限:抵当権実行としての競売による差押えの効力発生前に請求しなければならない
抵当権者が承諾したくないとき:抵当権者は、抵当権消滅請求を承諾しないときは、第三取得者から請求を受けたあと2か月以内に、抵当権を実行して競売の申立てをすれば、抵当権消滅請求の効果は生じない
※債務者の同意・承諾は不要
※登記をした各債権者に対し、必要事項を記載した書面を送付する必要がある。
※債務者や保証人は抵当権消滅請求をすることができない。
【法定地上権】
法定地上権とは
土地・建物を所有していたものの、抵当権が実行され、土地を競落され、土地と建物の所有者が異なることになった。その場合、建物の所有者に自動的に地上権(その土地を使える権利)を与える権利を、法定地上権といいます。
法定地上権の成立要件
法定地上権は、次の要件をすべて満たしたときに成立します。
①抵当権設定当時、土地の上に建物が存在すること
②抵当権設定当時、土地の所有者と建物の所有者が同一であること
③土地・建物の一方または双方に抵当権が設定されていること
④抵当権の実行(競売)により、土地の所有者と建物の所有者が別々になること
【一般競売】
法定地上権が適用できない場合、抵当権者は土地と建物を一括して競売にかけることができます。ただし、抵当権者が優先弁済を受けられるのは、抵当権のある土地の代価についてのみです。
※抵当権設定当時、更地であり、抵当権設定後に、その土地に建物を築造している場合に、一括競売が認められる。
※抵当権者が優先弁済を受けられるのは、土地の代価についてだけ
【賃借権との関係】
抵当権設定登記後の賃借権
抵当権設定登記後に設定された賃借権については、原則として、抵当権者および競売による買受人に対抗することができません。
抵当権設定登記前の賃借権
対抗要件を備えていれば、賃借人は賃借権を抵当権者等に対抗することができる
抵当権設定登記後の賃借権
原則:対抗要件を備えていたとしても、賃借人は賃借権を抵当権者等に対抗することができない
例外:すべての抵当権者が同意し、その同意の登記がある場合には、賃借権を対抗できる。
建物の賃借人の保護
抵当権設定登記後の賃借権は原則として抵当権者等に対抗することができません。そのため、抵当権が設定された建物を借りていた人(建物の貸借人)は、抵当権が実行されると、買受人に建物を明け渡さなければなりません(抵当権者等に賃借権を対抗できない場合)。
しかし、すぐに出ていくのは賃借人に酷なため、一定の場合には、買受人が建物を買い受けたときから6か月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡さなくても良いことになっています。
以上が、抵当権についてでした。抵当権は実行されないにこしたことはありませんが、万が一実行されてしまった時のことを考えてどのような状況になるかを整理しておきましょう。
では、まったり~!