こんにちは、だつりょくまんです。前回は、不動産の有効活用と投資分析について、書いてきました。
今回は、相続の基礎知識について、書いていきたいと思います。一緒に勉強を頑張っていきましょう!
【相続】
人が亡くなると、死亡した人(被相続人)の財産(資産および負債)が残された家族(相続人)に引き継がれます。このことを相続といいます。民法上の相続人は、被相続人の配偶者と一定の血族です。これらの人を相続人といいます。
※血族:両親や兄弟姉妹など血縁関係のある人のこと。互いに扶養義務があります。
相続人と優先順位
配偶者は必ず相続人になります。子がいる場合は配偶者と子が相続人。子がいない場合は配偶者と直系尊属というように、先の順位の人がいない場合に後の順位の人が相続人になります。
・配偶者:必ず相続人になる
・第一順位:子
・第二順位:直系尊属(父、母)
・第三順位:兄弟姉妹
【相続人】
被相続人の配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹が相続人になります。相続人は多くのケースで配偶者と子になりますが、子には、養子や非嫡出子も含まれます。また、胎児も相続人になります。
※民法上の相続人では、実子と養子、または嫡出子と非嫡出子の区別によって順位に違いはありません。同等に扱われます。
実子以外で相続にになれる子
〇胎児
被相続人が亡くなった時にまだ生まれていない子。死産を除き、すでに生まれたものとして相続人に含まれる
〇非嫡出子
法律上の婚姻関係がない男女間に生まれた子。実子。被相続人が男性の場合は認知が必要。
〇普通養子
実父母との法律上の関係を残し、養子縁組をする。実父母と養父母両方の相続人になれる。
〇特別養子
実父母との法律上の関係を終了し、養父母と養子縁組をする。養父母のみの相続人になれる。
※親族:6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族のこと。姻族は義理の兄弟姉妹など、結婚によりつながった関係のことです。
※特別養子縁組の養親の要件は、20歳以上の配偶者のいる25歳以上の者です。
相続人であっても、以下のケースの場合、相続人になれない人もいます。
相続人になれない人
〇死亡
相続時よりも前に亡くなっている人
〇欠格
被相続人を殺害したり、脅迫などして遺言状を書かせたりした人
〇廃除
被相続人を虐待するなどして、被相続人が家庭裁判所に申立てして相続権を失った人
代襲相続
相続時に相続人となれる人がすでに死亡していたり、欠格や廃除によって相続権を失っている場合、その人の子が代わりに相続することを代襲相続といいます。なお、相続放棄した者には代襲相続はありません。
被相続人の子が亡くなっている場合は、孫が代襲相続でき、その孫が亡くなっている場合はひ孫が再代襲相続できる。
被相続人に子がおらず、直系尊属や兄弟が亡くなっている場合は、甥や姪が代襲相続できる。ただし、甥や姪の子どもは代襲相続できない。
寄与、特別受益等
被相続人の生前に、被相続人の財産管理、療養介護など無償で長期的に被相続人の財産の維持・増加に貢献し相続人がいる場合に相続分に加算される、貢献に応じた加算分。貢献した相続人を寄与者といいます。
特別寄与料
被相続人の生前に、被相続人の療養介護など、無償で長期的に被相続人の財産の維持・増加に貢献した相続人以外の親族がいる場合、貢献に応じた金銭。貢献した親族を特別寄与者といい、相続人に対して特別寄与料の請求ができます(特別寄与料請求権)。
被相続人から生前贈与などで受けていた利益。特別受益を受けた人を特別受益者といいます。
配偶者居住権
夫婦の一方がなくなった後、残された配偶者が自宅の所有権を相続しなくても、特に定めがなければ、原則、終身使用・収益することができる権利です。配偶者は亡くなるまで、住み続けられますが、配偶者が亡くなると消滅します。なお、配偶者居住権に係る部分に相続税はかかりません。
配偶者短期居住権
夫婦の一方が亡くなった後、残された配偶者が自宅の所有権を相続しなくても、遺産分割成立まで等の一定期間(少なくとも6か月)、無償かつ無条件で住み続けられる権利です。自動的に発生します。
※婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住のための建物や土地が遺贈または贈与されたときは、原則として特別受益の持戻しを免除する制度が2019年7月1日から施行されました。
【相続分】
被相続人の財産は、相続人に分割されます。その割合を相続分といい、指定相続分と法定相続分があります。指定相続分とは、被相続人が遺言で各相続人に何を譲るか指定した相続分のことで、法定相続分より優先されます。一方、法定相続分は民法で定められた相続分のことで、相続人の順位に合わせて、その割合が少なくなっていきます。
※父母や祖父母など被相続人よりも前の世代の直系する親族のことを直系尊属、子や孫など後の世代のことを直系卑属といいます。
子の場合は1/2を子の人数で分割します。同様に直系尊属の場合は1/3を、兄弟姉妹の場合は1/4を相続人の人数で分割します。配偶者がいない場合は、各順位内で均等に分割します。
※半血兄弟姉妹(片方の親が同じ)の法定相続分は、全血兄弟姉妹(父母が同じ)の1/2になります。
【遺産分割】
遺産(相続財産)を相続人で分割することを、遺産分割といいます。
遺産分割の種類
遺産分割には遺言がある場合の指定分割と、遺言がない場合等に相続人全員で協議して決める協議分割のほか、調停分割、審判分割があります。
遺言分割の種類
〇指定分割
遺言によって遺産を分割する方法。協議分割よりも優先される。
〇協議分割
相続人全員で協議し、その合意で遺産を分割する方法。遺言と異なる分割もできる。法定相続分よりも優先される
〇調停分割
協議が成立しない場合、家庭裁判所の調停によって決める方法。相続人の合意が必要
〇審判分割
調停でも決まらない場合に、家庭裁判所の審判で分割する方法
※被相続人は遺言により、5年以内の期間で遺産分割を禁止することができます。相続人が未成年のため、成人するまで遺産分割を保留したいときなどに有効です。
遺産分割の方法
遺産分割には、現物を分割する現物分割、遺産をお金に換えて分割する換価分割、一部の相続人が現物で受け取り、他の相続人に現金等を支払う代償分割等があります。
主な遺産の分割方法
〇現物分割
自宅をそのまま相続するなど、遺産を現物のまま、その形状などを変更することなく分割する方法
〇換価分割
不動産等、公平な分割が難しい財産を売ることで現金化し、そのお金を分割する方法
〇代償分割
ある相続人が特定の不動産等を相続し、代わりに相応の現金(代償金)等を他の相続人に支払う分割方法
※代償財産が不動産や株式等の場合、時価で他の相続人に譲渡したとみなし、譲渡所得として所得税等が課される場合があります。
遺産分割協議書
遺言による指定がないときや、遺言の指定に反した分割を行う場合等は、相続人全員による遺産分割協議を行い、確定したら「遺産分割協議書」を作成します。なお、遺産分割を複数回に分け、一部の財産を先行して分割することも認められています。書式には特に決まりはありません。
<遺産分割協議書に必要な記載項目>
・被相続人の名前と死亡日、本籍、住所等
・遺産分割内容に相続人が合意していること
・遺産分割の具体的な内容
・相続人全員の記名と押印等
相続の承認と放棄
遺産にはプラスの資産だけでなく、借金などの負債も含まれています。そこで相続には以下の3つの選択肢が用意されています。原則は単純承認ですが、限定承認と相続放棄は、相続の開始があったことを知ってから3か月以内の申述が必要です。相続人が複数いる場合、限定承認は全員で申述する必要があります。
※被相続人の遺産に負債がある場合、相続放棄を選ぶことで、負債を引き継がなくて済みます。
相続の3つの選択肢
〇単純承認
相続内容:被相続人の財産をすべて相続する
申述期限:なし
手続:なし
〇限定承認
相続内容:被相続人の財産のプラスの資産の範囲内で負債を相続する
申述期限:3か月以内
手続:相続人全員で家庭裁判所に申述する
〇相続放棄
相続内容:被相続人の財産をすべて相続しない
申述期限:3か月以内
手続:放棄する相続人が単独で家庭裁判所に申述する
【遺言】
自分の死後の財産について、意思表示しておくことを遺言といいます。遺言を書面にしたものが遺言書で、遺言によって財産が相続人等に移転することを遺贈といいます。
遺言書の作成
・満15歳以上で意思能力があれば、誰でも作成が可能
・いつでも全部または一部を変更できる
・遺言書が複数ある場合は作成日の一番新しいものが有効となる(抵触する内容については新しいものが有効となる)
・遺言によって、5年以内の期限を定めて遺産の全部または一部について、分割を禁止することができる。
遺言の方法
被相続人が亡くなったときに、相続人が最初に確認しなければいけないことが、遺言書が残されているかどうかです。遺産分割では遺言は何よりも優先されます。
遺言には、自筆証言遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの方法があります。
※検認:家庭裁判所が遺言書の存在や内容等を明確にし、遺言書の偽造や隠匿、消失等を防ぐための手続きのこと。遺言書の有効性を認めるものではありません。
遺言の3つの方法
〇自筆証書遺言
・作成方法
♦遺言者が遺言の全文を自分で手書きし、日付と名前を記入して、押印する。
♦財産目録はパソコン作成可能。ただし、ページごとに署名と押印が必要
♦原則、検認が必要。ただし、法務局での保管制度を利用した場合は検認不要
・証人
不要
・検認
原則必要
〇公正証書遺言
・作成方法
♦遺言者が口述したものを公証人が筆記する
♦原本は公証役場に保管される
♦実印の押印が必要
・証人
2人以上
・検認
不要
〇秘密証書遺言
・作成方法
♦遺言者が遺言の内容を知られたくない場合に使用。作成した遺言書に署名、押印して封印する
♦公証人が日付等を記入。遺言の内容は秘密だが、遺言の存在を証明してもらう
♦パソコン作成や代筆も可能
・証人
2人以上
・検認
必要
遺言の証人
相続において利害関係にある人等は証人にはなれません。
証人になれない人
・未成年者
・推定相続人および受遺者(遺贈を受ける人)、これらの配偶者および直系血族
・公証人の配偶者ならびに4親等内の親族等
※推定相続人:現状で相続が発生した場合、相続人になるはずの人。
遺言執行者
被相続人の遺言書の内容に従って、財産の引き渡しを行います。相続開始時に未成年者や破産者でなければ、誰でも遺言執行者になることができます。
【遺留分】
遺留分とは、一定の要件を満たす相続人の最低限度の遺産取得割合のことです。遺留分を侵害された分割である場合、侵害された相続人は、多くの遺産を譲り受けた人に、遺留分侵害額に相当する財産(金銭)の支払いを請求することができます。これを遺留分侵害額請求権といいます。遺留分の権利を持つ人が複数人いる場合は、遺留分は原則、本来の法定相続分に応じて求めます。なお、相続開始前の遺留分放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限ります。
〇遺留分権利者が配偶者のみ、子のみ、配偶者と子、配偶者と直系尊属の場合
相続財産の1/2
〇直系尊属(父母)のみの場合
相続財産の1/3
※兄弟姉妹には遺留分はありません。
※各権利者個別の遺留分は、原則、「上記割合×各権利者の法定相続分」となります。
遺留分侵害額請求権の期限と内容
・遺留分権利者が相続開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことについて知った日から1年、また、相続開始から10年で遺留分侵害額請求権は消滅します。
・遺留分権利者は、遺留分侵害に対して、自身の遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます。
【成年後見制度】
認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な人が、財産管理、協議、契約等をするときに不利益にならないよう保護し、支援する制度が成年後見制度です。成年後見制度は大きく法定後見制度と任意後見制度に分かれています。
※法定後見制度は後見、保佐、補助に分かれていますが、申立ての多くが後見です。
後見・保佐・補助の開始申し立て
本人、配偶者、4親等以内の親族、後見人、保佐人、補助人、検察官などが申立てできます。
成年後見制度の種類
〇法定後見制度
・利用時期
判断能力が衰えた後
・選任方法
家庭裁判所が選任
・常況
♦後見
判断能力を欠く常況。後見人の行った行為は、原則、取り消しできるが、日用品の購入など、日常生活に関する行為は取り消せない。保護される人:被保佐人。保護する人:成年後見人
♦保佐
日常生活の簡単なことは自分でできるが、判断能力が特に不十分。保護される人:被保佐人。保護する人:保佐人
♦補助
おおよそのことは自分でできるが、判断能力が不十分。保護される人:被補助人。保護する人:補助人
〇任意後見制度
・利用時期
判断能力が衰える前
・選任方法
本人が後見人を選ぶ。※公正証書で契約
・常況
現在は判断能力があるが、将来、判断能力が不十分になったときに備える。
以上が、相続の基礎知識についてでした。相続というものはできればしたくない。このまま幸せがずっと続いてほしいと思う。しかし、いつかは来てしまう避けられない問題。その幸せを壊す可能性もある相続。知識をつける必要もあるけれど、なによりもみんなで譲り合ってけんかしないことが大切かと。
では、まったり~!