だつりょくまんのブログ

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【資格の話】自ら売主となる場合の8つの制限(8種制限) 宅建士 資格取得に向けて勉強中!

 こんにちは、だつりょくまんです。前回は、業務上の規制について、書いてきました。

datsuryokuman.hatenablog.com

 今回は、自ら売主となる場合の8つの制限について、書いていきたいと思います。

【自ら売主となる場合の8つの制限(8種制限)】

 宅建業法では、宅建業者が自ら売主となって取引する場合に適用される、特別な制限を8つ設けています(8種制限)。

クーリング・オフ制度

②一定の担保責任の特約の制限

③損害賠償額の予定等の制限

④手付の性質、手付の額の制限

⑤手付金等の保全措置

⑥自己の所有に属しない物件の売買契約(他人物売買)の制限

⑦割賦販売契約の解除等の制限

⑧所有権留保等の禁止

 なお、この制限は、売主が宅建業者(プロ)、買主が宅建業者以外の一般人(素人)となる場合にのみ適用されます。

クーリング・オフ制度】

 クーリング・オフ制度とは、お客さんがいったん行った契約や申込みをキャンセルすることをいいます。

クーリング・オフができない場所

 ただし、どんな場合にもクーリング・オフができるわけではなく、以下の場所で契約を締結したり、申込みをした場合には、クーリング・オフは適用されません。

①事務所

②以下の場所で専任の宅建士を設置する義務がある場所

A.事務所以外で、継続的に業務を行うことができる施設を有する場所

B.一団の宅地建物の分譲を行う、土地に定着する案内所

C.宅建業者が売主となり、他の宅建業者に媒介または代理の依頼をしたときは他の宅建業者の①と②のABに該当する場所

③買主が自ら申し出た場合の自宅、勤務先

申込みの場所と契約締結の場所が異なる場合

 例えば、宅建業者の事務所で買受けの申込みを行い、後日、喫茶店で契約を締結した、というふうに、買受けの申込みの場所と契約を締結した場所が異なる場合、クーリング・オフ制度が適用されるかどうかは、申込みの場所で判断します。

クーリング・オフができなくなる場合

 以下の場合には、たとえ買受けの申込みの場所がクーリング・オフできる場所に該当していても、クーリング・オフができなくなります。

クーリング・オフができる旨、方法を宅建業者から書面で告げられた日から起算して8日を経過した場合

②買主が宅地・建物の引渡しを受けかつ代金の全額を支払った場合

クーリング・オフの方法

 クーリング・オフは必ず書面で行わなければなりません。また、買主が書面を発したときにクーリング・オフの効果が生じます(発信主義)

クーリング・オフの効果

 適正にクーリング・オフがされた場合、売主(宅建業者)は、すでに受け取った手付金や代金等をすべて返さなければなりません。

 また、宅建業者クーリング・オフに伴う損害賠償や違約金の支払いを請求することはできません。

申込者に不利な特約

 クーリング・オフの規定に反する特約で、申込者等にとって有利な特約は無効となります。

【一定の担保責任の特約の制限】

 担保責任とは、たとえば完成したばかりの新築住宅を購入したが、その品質が契約の内容に適合していない(雨漏りなど)場合に売主が負うべき一定の責任のことです。

民法の規定

 民法の規定によると、売買において、引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないものである場合、あるいは、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合など、一定の要件を満たすときには、買主は、売主に対して、追完請求・代金減額請求・損害賠償の請求・契約の解除ができます。

 しかし、売主が種類・品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合、買主がその不適合を知った日から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、原則として、その不適合を理由として、追完請求・代金減額請求・損害賠償の請求・契約の解除ができなくなります。

 なお、民法では契約の内容に不適合があっても売主は担保責任を負わない等の特約を付けることもできるとしています。

宅建業法の規定

 宅建業法では、宅建業者は、自ら売主となる宅地・建物の売買契約において、その目的物が、種類・品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任について民法の規定よりも買主に不利となる特約をしてはならず、この規定に反する特約は無効とする、と規定しています。

 ただし、民法で規定する買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知という期間制限の部分については、特約で引渡しの時から2年以上の期間を定めた場合、その特約は有効となります。

特約の制限

〇原則

 宅建業者が自ら売主となる宅地・建物の売買契約において、その目的物が種類・品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任については、民法の規定より買主に不利な特約をしてはいけない

〇例外

 民法で規定する買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知という期間制限については、引渡しの時から2年以上の期間となる特約を定めることができる

※移転した権利の場合や数量の場合は適用外

※買主に不利な特約は原則無効→民法の規定に戻る

※買主に有利な特約は有効

【損害賠償額の予定等の制限】

民法の規定

 事前に損害賠償額の取決めをしていなかった場合には、損害を被った側の実損額(実際に損をした額)が損害賠償額となります。

 また、損害賠償額を事前に決めておくこともでき、これを損害賠償額の予定と言います。民法では、損害賠償の予定額には制限がありません。

宅建業法の規定

 宅建業法では、宅建業者が自ら売主となる売買契約においては、損害賠償額を予定し、または違約金を定める場合には、これらを合算した額が代金の10分の2を超えることができないとしています。

 なお、10分の2を超える定めをした場合には、その超える部分が無効となります。

※損害賠償額を予定しない場合または違約金を定めない場合には、実損額となります。(10分の2の制限はありません)

【手付の性質、手付の額の制限】

手付の性質の制限

 手付とは、売買契約において、買主が売主に対してあらかじめ交付する金銭等をいいます。

手付の種類

①証約手付

→契約の成立を証するために交付される手付

②違約手付

→契約違反があった場合に、没収されるものとして交付される手付

③解約手付

→売買契約を解除するときに用いられるものとして交付される手付

買主:売主が履行に着手するまで、手付を放棄して契約を解除することができる

売主:買主が履行に着手するまで、手付の倍額を現実に提供して契約を解除することができる

1⃣民法の規定

 民法では、手付の種類は当事者の合意によって決められます。なお、特段の定めがない場合の手付は、解約手付と推定されます。

2⃣宅建業法の規定

 宅建業法では、手付がどんな種類であったとしても、解約手付とされます。

手付の額の制限

1⃣民法の規定

 民法では、手付の額は当事者で自由に決めることができます。

2⃣宅建業法の規定

 宅建業法では、宅建業者が自ら売主となる売買契約においては、手付の額は代金の10分の2を超えることができないとしています。

 なお、10分の2を超える定めをした場合には、その超える部分が無効となります。

【手付金等の保全措置】

手付金等の保全措置の必要性

 手付金は、契約締結後、物件の引渡前に売主(宅建業者)に支払われます。

 不動産売買では、物件の代金が大きいので、手付金も何千万円になることがあります。もし、宅建業者が手付金を受け取った後、倒産してしまったら、買主は、物件も受け取れず手付金も返ってこない可能性があります。

 そのため、宅建業者は手付金等の保全措置をしたあとでなければ、手付金等を受け取れないことになっています。

手付金等とは

 ここでいう手付金等とは、契約締結後、物件の引渡前に支払われる金銭をいいます。

保全措置の内容

 宅建業者が自ら売主となる売買契約においては、原則として、以下の保全措置をしたあとでなければ手付金等を受け取ることはできません。

保全措置の方法

1⃣未完成物件の場合

①銀行等との保証委託契約

②保険会社との保証保険契約

2⃣完成物件の場合

①銀行等との保証委託契約

②保険会社との保証保険契約

③指定保管機関(保証協会)による保全措置

例外

1⃣共通

①買主への所有権移転登記がされたとき(または買主が所有権の登記をしたとき)

2⃣未完成物件の場合

②手付金等の額が代金の5%以下かつ1,000万円以下

3⃣完成物件の場合

②手付金等の額が代金の10%以下かつ1,000万円以下

保全措置が必要にもかかわらず、宅建業者がそれをしなかった場合、買主は手付金等の支払いを拒絶することができる

【自己の所有に属しない物件の売買契約の制限】

民法の規定

 民法では、他人の物を売る契約(他人物売買)は有効となります

宅建業法の規定

 宅建業者が自ら売主となる場合は、原則として他人物売買は禁止されています。

原則

 宅建業者は、自ら売主として、自己の所有に属しない物件の売買契約(売買予約契約を含む)を締結してはいけない

例外

1⃣自己の所有に属しない物件であっても、現在の所有者との間で、宅建業者が物件を取得する契約を締結している場合には、売買契約(売買予約契約を含む)を締結してもよい

①取得する契約は予約契約でもよい

②取得する契約は停止条件付契約ではだめ。

2⃣宅建業者は自ら売主として未完成物件を売ることはできない。ただし、以下の場合には未完成物件を売ることができる

①手付金等の保全措置を講じているとき

②手付金等の保全措置を講じる必要がないとき

 

 以上が、自ら売主となる場合の8つの制限でした。一般的な契約と比較して、宅建業法は買主を保護する制度となっています。そのため、契約書をしっかりと読む必要はありますが、悪意のある契約内容であっても、一定程度は買主が保護されるようです。

 

 では、まったり~!