こんにちは、だつりょくまんです。前回は、弁済、相殺、債権譲渡について、書いてきました。
今回は、売買について、書いていきたいと思います。一緒に勉強を頑張っていきましょう。
【売主の義務】
売買契約を締結すると、売主には代金債権(代金支払請求権)と売ったものの引渡債務が発生し、買主には、買ったものの引渡債権(引渡請求権)と代金支払債務が発生します。
また、売主は買主に対して次のような義務を負います。
1、権利移転の対抗要件に係る義務
登記や登録などの売買の目的である権利の移転についての対抗要件を備えさせる義務を負う。
2、他人の権利の売買における義務
他人の権利(全部または一部が他人のもの)を売買の目的とするときは、その権利を取得して移転する義務を負う
【買主の救済(売主の担保責任)】
買主の救済(売主の担保責任)
売買契約によって、買主は目的物を手に入れることができますが、売主が契約の内容を間違えていたり、中途半端に済ませてしまっていることがあります。
売主が、A 種類・品質・数量について契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合や、B買主に移転した権利が契約の内容に適合しない場合には、買主は、売主に対して、次のような手段をとることができます。
①追完請求、②代金減額請求、③損害賠償請求、④契約の解除
※物の売買だけでなく、権利の売買も基本的に同じように考える
※AやBにおける、売買の売主が負う①~④についての責任を売主の担保責任といいます。この担保責任は契約不適合責任といういい方もあり、契約不適合責任という場合には、その意味する内容に幅があります。
追完請求
追完請求とは、引き渡された目的物が、種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないものであった場合や、買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものであった場合に、契約の内容に適合した目的物や権利となるよう売主に対して履行を求めることをいいます。
原則
引き渡された目的物が、種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないもの(不適合)であるときは、買主は、売主に対して目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。
売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないときも、履行の追完を請求することができる。
※ただし、売主は、買主に不相当な負担を課すものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる
例外
この不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は履行の追完の請求をすることができない
代金減額請求
原則
引き渡された目的物の種類・品質・数量が契約の内容に適合していない場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をして、その期間内に履行の追完がされなかったときは、買主は、売主に対して、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求できる
※売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないときも、代金の減額を請求することができる
例外
以下の場合は、催告をすることなく直ちに代金の減額を請求できる。
①履行の追完が不能なとき
②売主が履行の追完を拒絶する意思表示を明確に表示したとき
③契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき
④買主が催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかなとき
※この不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は代金の減額を請求することができない
損害賠償請求・契約の解除
売主が、種類・品質・数量について契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合や買主に移転した権利が契約の内容に適合しない場合、買主は、売主に対して債務不履行の一般規定により、損害賠償の請求や契約の解除をすることができます。
抵当権等が設定されていた場合の買主による費用償還請求
買い受けた不動産に契約の内容に適合しない先取特権、質権、抵当権が存していた場合で、買主が費用を支出してその不動産の所有権を保存したときは、売主に足してその費用の償還を請求することができます。
担保責任の期間の制限
売主が、種類または品質に関して契約の内容に適合しないものを引き渡した場合でも、一定期間が過ぎたときには、買主は責任追及できなくなります。
原則
売主が種類または品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡したときは、買主は、その不適合を知った時から1年以内に、その旨を売主に通知しなければ、契約の不適合を理由に追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除をすることができない
例外
売主が引渡しの時に、その不適合を知っていた、または重大な過失により知らなかったときは、この期間制限はなくなる
※数量に関する契約の不適合や移転した権利の契約の不適合は担保責任の期間の制限の対象外
※通知については、不適合の種類と大体の範囲の通知が必要
※担保責任の期間の制限とは別に消滅時効にかかる
→原則、買主が権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年
担保責任を負わない旨の特約
当事者間で売主の担保責任を負わない旨の特約を結んだときには、原則として売主は担保責任を負いません。
ただし、一定の場合には、(特約を結んでいたとしても)売主は担保責任を免れることはできません。
原則
当事者間で担保責任を負わない旨の特約を結んだときは、売主は担保責任を免れる
例外
売主が事実(契約の内容に適合しないこと)を知っていたのに、買主にいわなかった場合などは、売主は担保責任を免れることはできない。
危険の移転
目的物が滅失・損傷した場合、どのタイミングでその不利益を負うことになるかは、売主・買主にとって重要です。
1、買主が受け取った場合
売主による目的物の引渡しがあった時以後に、その目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失・損傷したときは、買主は、滅失・損傷を理由に履行の追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約の解除をすることができず、買主は、代金の支払いを拒むことができない
2、買主が受け取らなかった場合
売主が契約の内容に適合する目的物で引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、または受けることができない場合、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によって目的物が滅失・損傷した場合も1と同じように扱う
【手付】
手付とは
手付とは、売買契約をしたときに買主が売主に交付する金銭のことをいいます。手付には証約手付や解約手付などがありますが、どの手付と定めなかったときには解約手付と推定されます。
※証約手付:契約が成立した証拠として交付される手付
※解約手付:契約成立後、相手方の債務不履行がなくても解約できるという趣旨で交付される手付
解約手付による契約の解除
解約手付は、契約成立後、相手方に債務不履行がなくても、自己都合で契約を解除できる趣旨で交付される手付をいいます。
①手付による契約の解除ができるのは、相手方が履行に着手するまでの間
②買主は手付を放棄すれば契約を解除できる。売主は手付の倍額を現実に提供すれば契約を解除できる
③手付によって契約が解除されたときは、損害賠償請求はできない
以上が、売買についてでした。簡単な売買も法律用語で羅列すると難しく感じます。この項目は、しっかりと例を考えながら進めると良いですね。
では、まったり~!