こんにちは、だつりょくまんです。前回は、自ら売主となる場合の8つの制限(8種制限)について、書いてきました。
今回は、報酬に関する制限について、書いていきたいと思います。
【報酬に関する制限の全体像】
報酬の受取り
宅建業者は、宅地・建物の売買・交換・貸借の媒介や代理を行い、契約が成立したときは、依頼主から報酬を受け取ることができます。ただし、受け取れる報酬額には制限があります。
必要経費
宅建業者は、契約を成立させるために必要経費がかかったとしても、原則として報酬とは別に必要経費を請求することはできません。ただし、例外として以下の場合には、報酬とは別に必要経費を請求することができます。
原則
報酬とは別に必要経費を請求することはできない。(広告費・出張費など)
例外
以下の場合には、報酬のほかに別途請求することができる
①依頼者から依頼されて行った広告の料金
②依頼者から特別の依頼により支出する特別の費用で、事前に依頼者の承諾があるもの
消費税
消費税とは、モノやサービスを消費したときにかかる税金をいい、税率は10%(消費税率7.8%、地方消費税率2.2%)です。
1⃣消費税の課税対象
宅地・建物の取引における、消費税がかかる取引(課税取引)と消費税がかからない取引(非課税取引)の区分は次のとおりです。
①土地
売買・交換(売買代金・交換の評価額)=非課税
貸借(地代・賃料・権利金)=非課税
②居住用建物
売買・交換(売買代金・交換の評価額)=課税
貸借(地代・賃料・権利金)=非課税
③居住用以外の建物(事務所、店舗など)
売買・交換(売買代金・交換の評価額)=課税
貸借(地代・賃料・権利金)=課税
2⃣報酬にかかる消費税
宅建業者が課税業者(消費税を納める義務があるもの)である場合には、報酬額に10%の消費税額を上乗せした金額を受け取ることができます。
一方、宅建業者が免税業者(消費税を納める義務がない者)である場合には、報酬額に消費税額を上乗せすることはできません。しかし、宅建業者は広告代金等の費用を支払うさいに消費税額を負担しているため、これを考慮し、報酬額に4%を仕入れにかかる消費税相当額として上乗せすることができます。
【売買・交換の媒介・代理における報酬限度額】
報酬基本額
宅建業者が売買・交換の媒介・代理をしたときに受け取ることができる報酬限度額は、報酬基本額をもとにして計算します。
報酬基本額(税抜き価額)
1⃣代金額200万円以下
代金額×5%
2⃣代金額200万円超え~400万円
代金額×4%+2万円
3⃣代金額400万円超え
代金額×3%+6万円
※代金額とは
①売買の場合
売買の代金額から消費税額を除いた価額(税抜き価額)
②交換の場合
交換の評価額から消費税額を除いた価額(税抜き価額)
※交換する2つの物件の価額に差がある場合は、いずれか高い価額
※建物と土地等、消費税の課税対象があるため注意が必要
売買・交換の媒介の報酬限度額
売買・交換の媒介において、依頼者の一方から受け取れる報酬限度額は、上記で求めた金額(プラス消費税相当額)となります。
なお、宅建業者が買主と売主の両方から媒介の依頼を受けた場合には買主と売主の双方から報酬を受け取ることができます。
売買・交換の媒介の報酬限度額=報酬基本額×1.1(課税業者)or1.04(免税業者)
売買・交換の代理の報酬限度額
売買・交換の代理において、宅建業者が受け取れる報酬限度額は、報酬基本額で求めた金額の2倍(プラス消費税相当額)となります。
売買・交換の代理の報酬限度額=報酬基本額×1.1(課税業者)or1.04(免税業者)
なお、一方から代理の依頼を、他方から媒介(または代理)の依頼を受けた場合、双方から受け取れる報酬の合計限度額は報酬基本額(プラス消費税相当額)の2倍となります。
複数の業者が関与する場合の報酬限度額
同一の取引において、複数の宅建業者が関与した場合、これらの宅建業者が受け取れる報酬の合計額は、1つの宅建業者が関与した場合の報酬限度額以内でなければなりません。
また、各宅建業者が受け取れる報酬額は、各宅建業者が受け取れる報酬限度額以内でなければなりません。
低廉な空き家等の売買・交換の媒介・代理における特例
低廉な空家等の売買・交換の媒介・代理の場合には、一定の要件の下に、通常の報酬限度額に加えて、現地調査等に要する費用相当額も請求できます。
要件
①低廉な空家等であること
→売買代金額(消費税相当額を含まない)または交換の宅地・建物の価額(消費相当額を含まない。宅地・建物の価額に差があるときは、いずれか多い価額)が400万円以下の宅地・建物
②売買・交換の媒介・代理であること
③通常の売買・交換の媒介と比較して現地調査等の費用を要するものであること
④売主・交換を行う者である依頼者から受ける報酬であること
→買主や交換の相手方から受ける報酬は入らない
⑤現地調査等に要する費用に相当する額であること
→あらかじめ依頼者に対して説明し、合意が必要
報酬限度額(消費税相当額を含む)=通常の売買・交換の媒介の報酬限度額+現地調査等に要する費用相当額
※この報酬限度額は18万円×1.1(=19万8千円)を超えてはならない
【貸借の媒介・代理における報酬限度額】
貸借の媒介の報酬限度額
貸借の媒介において、依頼者の双方から受け取れる報酬の合計限度額は、1か月分の借賃(プラス消費税相当額)となります。
貸借の媒介の報酬限度額=1か月分の借賃×1.1(課税業者の場合)or1.04(免税業者の場合)
※合計して1か月分ならば、借主・貸主からいくらずつ受け取るかは原則として自由であるが、居住用建物の媒介の場合には下記の特例がある
居住用建物の特例(居住用の建物の場合のみ。事業用はこの特例はない。土地の貸借もこの特例はない)
報酬額について、媒介の依頼を受けるときに依頼者の承諾を得ていない場合、依頼者の一方から受け取れる報酬額は1/2か月分が上限となる。
貸借の代理の報酬限度額
賃借の代理において、宅建業者が依頼者から受け取れる報酬限度額は、1か月分の借賃(プラス消費税相当額)となります。
権利金の授受がある場合
権利金とは、権利設定の対価として支払われる金銭で、返還されないものをいいます。
居住用建物以外(宅地、事業用建物等)の賃貸借契約において、権利金の授受がある場合、権利金を売買代金とみなして報酬額を計算することができます。
複数の業者が関与する場合の報酬限度額
同一の取引において、複数の宅建業者が関与した場合、これらの宅建業者が受け取れる報酬の合計額は、1つの宅建業者が関与した場合の報酬限度額以内でなければなりません。
【その他】
・宅建業者は事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通大臣が定めた報酬額を掲示しなければならない
・報酬額の制限は、宅建業者間の取引の場合にも適用される。
以上が、報酬額に関する制限についてでした。宅建業者が受け取ることができる報酬額は決まりがあります。多少複雑ではありますが、制限があることは素人からすればありがたいことです。勉強をしている方にとってはなかなか入ってきにくい項目なので、一緒に頑張りましょう!
では、まったり~!